マスコミ・週刊誌による隠し撮りと盗撮・肖像権侵害について,オトナンサーさんから取材を受けた♪

上記タイトルの通り,マスコミ・週刊誌による芸能人や政治家の隠し撮りの法的責任について,グラディアトル法律事務所の若林翔弁護士がオトナンサーさんから取材を受け,解説をいたしました。

 

・マスコミ・週刊誌の隠し撮りは迷惑防止条例の「盗撮」に該当するか?

・週刊誌が芸能人や有名人のプライベート現場を隠し撮りした場合の法的責任

肖像権侵害?

軽犯罪法違反(同法1条23号、ひそかにのぞき見る行為)?

・探偵が調査の過程で浮気現場を隠し撮りすることもありますが、法的責任を問われることはあるのか?

 

記事はこちら⬇️

マスコミによる芸能人のプライベート「隠し撮り」、法的責任は問われず?

 

東京都迷惑防止条例と盗撮

盗撮の定義について,東京都の迷惑防止条例では,以下のように定めています。

『正当な理由なく、人を著しく羞恥(しゅうち)させ、または人に不安を覚えさせるような行為』であり、かつ公共の場所などで『人の通常衣服で隠されている下着または身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、または撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、もしくは設置する』行為

マスコミや週刊誌による隠し撮りが上記の定義に該当すれば,迷惑防止条例違反となります。

しかし,マスコミ等による隠し撮りは,通常「人の通常衣服で隠されている下着または身体」を撮影するものではないので,盗撮には該当しないことが多いでしょう。

東京都「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」

(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
第5条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
(1) 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。
(2) 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)
(3) 前2号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。

(罰則)
第8条 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(1) 第2条の規定に違反した者
(2) 第5条第1項又は第2項の規定に違反した者(次項に該当する者を除く。)

2 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
(1) 第5条第1項(第2号に係る部分に限る。)の規定に違反して撮影した者

引用|東京都迷惑防止条例(第5条1項,2項以下略)

その他,迷惑防止条例と盗撮については,以下の記事も参照ください。

リンク:風俗の盗撮と迷惑防止条例の関係 – 条例の適用範囲を解説

https://criminal-case.gladiator.jp/盗撮と迷惑防止条例の関係まとめ/

マスコミ・週刊誌の隠し撮りと肖像権侵害

肖像権とは,みだりに自己の容ぼう等を撮影・公表されない権利と考えられています。

もっとも,肖像権については,法律上の明文はなく,憲法13条に基づく人格的利益の一つとして考えられています。

ただ,撮影・公表されたからといって全部が違法ではなく,違法かどうかは,「社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべき」とされていて,,受忍の限度を超えるかどうかは,被撮影者の社会的地位,撮影された被撮影者の活動内容,撮影の場所,撮影の目的,撮影の態様,撮影の必要性等を総合考慮して判断されます。

最判平成17年11月10日

人は,みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する(最高裁昭和40年(あ)第1187号同44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁参照)。

もっとも,人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等として許されるべき場合もあるのであって,ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは,被撮影者の社会的地位,撮影された被撮影者の活動内容,撮影の場所,撮影の目的,撮影の態様,撮影の必要性等を総合考慮して,被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。

マスコミ・週刊誌による隠し撮りと肖像権については,以下の裁判例があります。

すなわち,自宅内での姿を盗撮された写真を載せた週刊誌「女性セブン」の記事でプライバシーを侵害されたとして,歌手の中森明菜さん(51)が発行元の小学館などに2200万円の損害賠償を求めた訴訟で,東京地裁が同社とカメラマンに慰謝料500万円弁護士費用50万円の支払いを命じた判例です。

東京地判平成28年7月27日

人が正当な理由がなく住居をのぞき見されないこと自体,法的保護の対象であり,これを侵害する行為は犯罪となる(軽犯罪法1条23号参照)。さらに,何人も,その承諾なしに,みだりにその容貌・姿態を撮影されない自由を有し,また撮影された写真を公表されない自由を有し,これらは個人の人格的利益として法的保護の対象となる(最高裁判所昭和44年12月24日大法廷判決刑集23巻12号1625頁参照)

特に,自宅住居においては,他人の視線から遮断され,社会的緊張から解放された無防備な状態であるから,かかる状態の容貌・姿態は,誰しも他人に公開されることを欲しない事項であって,これを撮影され公表されないことは最大限尊重され,プライバシーとして法的保護を受けるべきである。

ここで,上記認定の事実経過からすると,被告会社の被用者であるA編集長は,その職務の執行について,被告Y1に原告の写真撮影を依頼し,被告Y1において,原告の承諾もないのに,原告の住居内をのぞき見た上,住居内にいる原告を写真撮影し,そのデータをA編集長に渡し,A編集長において,それが,原告の承諾もないのに,住居内にいる原告を写したものと気付きながら,広く頒布する本件雑誌に,本件写真と共に本件記事を掲載させたものであるから,A編集長と被告Y1は,共同して,原告のプライバシーを侵害したものといえる

したがって,これらの一連の行為について,被告会社は,民法719条1項,715条1項,709条に基づき,被告Y1は,民法719条1項,709条に基づき,連帯して,本件撮影および本件写真が,本件雑誌に掲載されたことによって,原告に生じた精神的損害を慰謝する義務があると解される。

本件撮影態様は悪質で,A編集長は違法性を認識した上で確信犯的に本件写真の本件雑誌への掲載を行い,被告会社も違法性を知った上で会社としてこれを容認したものであるばかりか,本件不法行為が病気療養中の原告に与えた精神的損害は甚大で,その歌手としてのイメージをも害するもので,原告には,明確な額は特定できないものの経済的な損失が発生したと解される一方,被告らが主張する点はいずれも慰謝料を減額すべき事情に該当しないものであるところ,これらの点のほか,上記1認定の事実および本件記録に現れた一切の事情を総合考慮すると,本件不法行為によって,原告に生じた精神的損害を慰謝するには,500万円をもって相当

なお,その他の肖像権については,以下の記事もご参照ください。

肖像権侵害とパブリシティ権侵害について,コレコレvs加藤紗里事件と判例紹介

 

探偵の隠し撮り・盗撮の違法性,肖像権侵害

探偵の仕事では,浮気調査等で,証拠を掴むために浮気現場を隠し撮りしたりすることがあります。

このような探偵が業務上行う隠し撮り・盗撮は違法なのでしょうか?

探偵業法2条1項では『他人の依頼を受けて、特定人の所在または行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞き込み、尾行、張り込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務』を探偵の業務と定めており,依頼を受けて浮気現場を撮影する行為は探偵業務の一環であり,証拠収集との兼ね合いにおいて,撮影の必要性があります。

他方で,探偵による調査対象者の肖像権(承諾なしに,みだりにその容貌・姿態を撮影されない権利)にも配慮する必要があります。

そこで,上記観点も踏まえた上で,被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断すべきと考えられます。

裁判例では,探偵が,調査対象者の男性がホテルのロビーに女性といる場面や滞在している客室に女性とともに入室する場面を撮影した行為について,探偵の業務としての必要性や行為態様が著しく不相当といえないことから,社会生活上受忍の限度を超えるものとはいえず,不法行為上違法ではないと判断しています。

東京地判平成29年12月20日

「人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等として許されるべき場合もあるのであって,ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは,被撮影者の社会的地位,撮影された被撮影者の活動内容,撮影の場所,撮影の目的,撮影の態様,撮影の必要性等を総合考慮して,被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである」(最高裁平成17年10月11日第一小法廷判決・民集59巻9号2428頁)ところ,同判例の趣旨に鑑みると,本件のような不貞行為に係る撮影行為に当たっても,撮影場所,撮影目的,撮影態様,撮影の必要性等を総合考慮し,かつ,当該行為の根拠となる法令がある場合には同法令も踏まえ,被撮影者の人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを検討することとなる。

そこで,検討すると,いわゆる探偵業を営む被告の調査員の行為は,原告の妻の依頼により,原告の不貞行為に関する調査をするものであって(甲2),探偵業法2条1項の「他人の依頼を受けて,特定人の所在または行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞込み,尾行,張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い,その調査の結果を当該依頼者に報告する業務」である「探偵業務」の一環として行われたものであり,同法所定の調査や資料収集に必要な行為については許容されている。この点,本件の調査の目的は,原告の不貞行為に係る資料の収集ということにあって,そのような目的に照らせば,原告の不貞行為を示す客観的な資料として,原告であることを特定でき,かつ,原告が不貞行為をしていることを推認させるような場面を撮影する必要性は高いというべきである。

そうすると,被告の調査員が,原告であることを特定できる方法により,原告がホテルのロビーに女性といる場面や原告が滞在している客室に女性とともに入室する場面を撮影することの必要性は認められる(甲2)。

また,その撮影場所・態様は,被告の調査員が,ホテルのロビーや客室階まで原告を尾行,張り込みして,上記場面を撮影するというものであり,探偵業法所定の探偵業務の範囲に含まれているし,第三者が訪れるホテルのロビーや客室階という場所での撮影行為であって,ホテルや原告の不貞行為と関係があると認められない第三者の承諾が得られない可能性があるとしても,原告や不貞の相手方と目される第三者との関係において,著しく不相当であるとまでいうことはできない

以上のとおり,被告の調査員による原告の撮影行為は,原告の人格的利益を侵害するものであるにせよ,社会生活上受忍の限度を超えるものであるとはいえず,違法性はないものというべきである。

 

 

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