近年,スマートフォンによる動画機能の向上や,カメラの小型化・高性能化が進んだこともあり,リベンジポルノや盗撮動画等,自身の性的な動画や画像がアダルトサイト・エロサイトにアップロードされてしまうという被害相談が増えてきています。
リベンジポルノの削除等に関する相談例としては以下のようなものがあります。
- 恋人が撮った性的な動画を別れた後にアダルトサイト・エロサイトにUPされてしまった。
- 知らぬ間に盗撮されていた性行為中の動画がFC2動画で販売されてしまった。
- パパ活相手が自分で楽しむだけと言っていたのに。。
- 風俗店での盗撮動画が売られていた。
- 出会い系サイトで出会った人に送ってしまった裸の画像・動画がTwitterで拡散されてしまった
- AV出演強要をされた(騙された・脅されたなど)
- リベンジポルノをばら撒くと脅迫・恐喝・強要されている
リベンジポルノなどの性的な動画・画像のインターネット上の流出については,一度,拡散されてしまうと,それを保存した人が再度アップロードしてしまい完全な消去が難しいという特徴があります。
そのため,動画・画像の削除等早期に適切な対応を採る必要があります。
この記事では,リベンジポルノを規制する法律,削除・開示・刑事告訴等の対応策などついて解説していきます。具体的には,以下のとおりです。
- リベンジポルノとは何か
- リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)
- わいせつ電磁的記録の頒布罪
- リベンジポルノの削除方法
- リベンジポルノの発信者情報開示の方法
- リベンジポルノの刑事告訴・被害届
リベンジポルノとは?
リベンジポルノとは,別れた恋人や配偶者などに対する復讐や報復といった目的で、交際中に撮影した猥褻な写真や動画をインターネット上に拡散、ばらまく行為を指します。
一般的なリベンジポルノのイメージは上記のような,交際関係にあった男女の復讐目的による行為でしょう。
しかし,リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)上のリベンジポルノは,交際関係や報復目的に限らず,写真等を公開することに同意しなかったのにもかかわらず,第三者が閲覧できるように公開されたことだけで十分です。
つまり,SNSで知り合ってその日のうちに関係を持ち,撮影してしまったような場合にも該当します。
警察庁の2020年3月5日の発表によると,2019年のリベンジポルノに関する警察への相談件数が1479件(前年比9・8%増)で過去最多であり,2015年から5年連続で1000件を超え,増加傾向にあるとのことです。
また,令和元年の警察白書によると,平成30年中のリベンジポルノ(私事性的画像)に関する相談等の件数は1347 件でした。
被害者と加害者の関係については,以下のとおりです。
- 交際相手(元交際相手を含む。)が61.6%
- インターネッ ト上のみの関係にある知人・友人が11.1%
被害者の年齢については以下のとおりです。
- 20歳代が 38.2%
- 19歳以下が 26.1%
なお,私事性的画像被害防止法の適用による検挙件数は36件
脅迫,児童買春・児童ポルノ禁止法違反等の他法令による検挙は217 件です。
以上,令和元年警察白書参照 https://www.npa.go.jp/hakusyo/r01/pdf/06_dai2sho.pdf
なお,近年話題となっているディープフェイクポルノについての法律問題等については,以下の記事をご覧ください。
リベンジポルノ防止法の構成要件について
リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)では,対象となる性的な画像・動画を「私事性的画像記録」として定義しております。
そして,この私事性的画像記録について,以下の二つの行為を処罰対象としています。
- 公表罪(3年以下 50万円以下)
- 公表目的提供罪(1年以下 30万円以下)
まず,「私事性的画像記録」とは,本人が第三者に見られることを認識した上で撮影を許可した画像・動画以外の画像であって,性交又は性交類似行為など以下の3つの類型の画像・動画の記録をいいます。
- 性交又は性交類似行為に係る人の姿態
(例)異性間・同性間の性交行為,手淫・口淫行為など - 他人が人の性器等を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
(例)性器,肛門又は乳首を触る行為など - 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって,殊更に人の性的な部位が露出され又は強調されるものであり,かつ性欲を興奮させ又は刺激するもの
(例)全裸又は半裸の状態で扇情的なポーズをとらせているものなど
そして,公表罪とは,第三者が撮影対象者を特定できる方法で,私事性的画像記録(物)を不特定若しくは多数の者に提供し,又は公然と陳列する行為を処罰するものです。
公表目的提供罪とは,公表させる目的で、私事性的画像記録(物)を提供する行為を処罰するものです。
このように,リベンジポルノ防止法では,男女間の交際関係や,復唱目的などはその構成要件とされておりません。
また,私事性的画像記録は,無修正の性器が写されていなくて対象となることから,「わいせつ」の概念よりも広いものと考えられます。
私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律
(定義)
第二条 この法律において「私事性的画像記録」とは、次の各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像(撮影の対象とされた者(以下「撮影対象者」という。)において、撮影をした者、撮影対象者及び撮影対象者から提供を受けた者以外の者(次条第一項において「第三者」という。)が閲覧することを認識した上で、任意に撮影を承諾し又は撮影をしたものを除く。次項において同じ。)に係る電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。同項において同じ。)その他の記録をいう。一 性交又は性交類似行為に係る人の姿態
二 他人が人の性器等(性器、肛こう門又は乳首をいう。以下この号及び次号において同じ。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
2 この法律において「私事性的画像記録物」とは、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、前項各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像を記録したものをいう。
(私事性的画像記録提供等)
第三条 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。2 前項の方法で、私事性的画像記録物を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者も、同項と同様とする。
3 前二項の行為をさせる目的で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を提供し、又は私事性的画像記録物を提供した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
4 前三項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
5 第一項から第三項までの罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条の例に従う。
リベンジポルノとわいせつ電磁的記録の頒布罪
リベンジポルノ画像・動画が「わいせつ」なものだと判断され,それがネット上で頒布・公然陳列等された場合には,わいせつ電磁的記録の頒布罪等に該当することになります。
ただし,わいせつの定義,概念は非常にあいまいです。
過去の判例では,わいせつとは,いたずらに性欲を興奮・刺激させ,正常な性的羞恥心を害し,善良の性的道義観念に反するものと定義されました。
現在の捜査実務では,無修正の性器が写っている画像・動画について「わいせつ」であると考えているようです。
AV(アダルトビデオ)等について,性器にモザイクがかけられているのもそのためです。
刑法(わいせつ物頒布等)第百七十五条 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。
リベンジポルノの削除方法
リベンジポルノに関連する法律を学んだところで,具体的に,削除するためにはどうすれば良いのでしょうか?
前述したように,リベンジポルノは,一度インターネット上にアップロードされてしまうと,それをダウンロードした人が再度アップする恐れがあります。
そのため,できる限り速やかにリベンジポルノ画像・動画を削除する必要があります。
リベンジポルノの削除方法については,以下の方法があります。
- 自分で削除申請をする
- 弁護士から削除申請をする
- 弁護士にお願いをして仮処分を申し立てる
- 警察に削除してもらう
まず,自分でリベンジポルノを削除する方法について,見てみましょう。
これについては,リベンジポルノがどの媒体にUPされたかにより,削除申請方法が異なります。
例えば,Twitterであれば,違反報告をしていくことになるでしょう。
また,xvideos,FC2動画,tokyomotion,pornhubなどのアダルトサイトの場合,そのサイト上の削除申請フォーム等から削除申請をしていくことになります。
海外サーバーの場合などでは,削除申請を英語で行う必要があるサイトもあります。
次に,弁護士からリベンジポルノの削除申請をする方法についてです。
削除申請の方法については,基本的には自分で削除申請をする場合と同様のフォームから削除申請をすることが多いです。サイトによっては弁護士や警察などの法律関係者からの削除申請フォームが別にあることもあり,その場合にはそちらから削除申請をしていきます。
また,運営会社に対して,郵送で削除申請の申立てを行うこともあります。
弁護士に依頼するメリットとしては,経験豊富な弁護士であれば,サイトごとの対応方法や,利用規約・削除要件等を熟知しているため,削除がされる可能性が高い削除申請の書き方ができるという点が挙げられます。
実際に,弊所では数多くのリベンジポルノの削除依頼を受けているため,すでに対応したことのあるサイトが多くあり,対策と傾向についてのノウハウが蓄積されています。
弊所でのxvideos,tokyomotion,pornhubというアッダルトサイトにアップロードされてしまったリベンジポルノ・アダルト動画の削除の解決事例については,以下の記事をご参照ください。
また,FC2動画アダルトにてアップロードされた性行為の動画の削除事例について以下の記事をご参照ください。
pornhub、FC2動画、HPJAV、KissJAV、Maddawg JAV、Avgle、JAVFAN、94ERO、JAV Grown、sharevideosなどの複数の海外アダルトサイトにハメ撮り動画を投稿されてしまったケースの削除事例については、以下の記事をご参照ください。
そして,削除の仮処分の申立てについてです。
これは,裁判所に対して,アダルトサイト,各種掲示板やSNS等の運営者を相手方として,削除を求める仮処分の申立てをするという方法です。
サイトによっては,任意請求によっては削除をしてくれないけれども,裁判所からの削除せよとの仮処分決定があれば削除に応じてくれるサイトもありますので,そのようなサイトを相手にする場合には,この削除の仮処分の申立てをしていくことになります。
最後に,警察を通じてリベンジポルノの削除をする方法です。
警察が被害届や刑事告訴を受理するなどによって,捜査をして,リベンジポルノをUPした被疑者を逮捕するなどして,それに伴い,削除をしてもらうという方法です。
また,警察では,近年のリベンジポルノ事案の増加に伴い,プロバイダ等に対して削除を要請するなどの対応もおこなっています。
ただし,インターネットに関する法的問題は,複雑な知識が要求されることから,現場の警察官が詳しくなく,迅速に対応してもらえないケースもあります。そのような場合には,弁護士に相談するのが良いかと思います。
リベンジポルノの犯人特定・発信者情報開示
リベンジポルノの被害にあった場合,その犯人を特定して,損害賠償をしたり,刑事告訴をしていくという対応方法が考えられます。
なお,リベンジポルノをバラまくなどと脅されている場合や,UPした人が既に特定されている場合もあり,そのような場合には刑事告訴や損害賠償請求,弁護士から画像や動画を削除するよう警告文を送るなどの方法により対応していくことになります。
参考記事リンク:《男女トラブル》ハメ撮りの流出を防ぎたい!弁護士に相談した結果は?
リベンジポルノの犯人を特定するための方法として,発信者情報開示の手続きがあります。
この手続きは,大きく分けて2段階手続きを踏む必要があります。まず、リベンジポルノがUPされているアダルトサイト,掲示板やSNSの管理人に対して発信者情報開示の仮処分手続きをします。この手続きにおいて立証すべき事柄は削除の仮処分と同様です。当該投稿におけるIPアドレスとタイムスタンプ等を管理人から入手します。
しかし、管理人自身は発信者の個人情報は持っていませんので、発信者情報開示をするには次のステップを踏む必要があります。
その前提として、入手したIPアドレスからインターネットサービスプロバイダを特定しておきます。Whois情報検索というサイトを使用して行います。
その上で、特定したインターネットサービスプロバイダに対して、ログ保存の請求を行い、ログ情報を消失を防ぎます。
インターネットサービスプロバイダにおけるログの保存期間は一般的に3ヶ月であるため、この手続をしなければ次の訴訟手続中にログが消失してしまい、インターネットサービスプロバイダ自身ですら発信者情報を特定することができなくなるからです。
次に、インターネットサービスプロバイダに対して発信者情報開示請求の訴訟を提起することになります。当該訴訟にも勝訴すれば、無事発信者の情報が開示され、投稿者の本名、住所等を特定できることになります。
リベンジポルノと刑事告訴・被害届
リベンジポルノについては,リベンジポルノ防止法や刑法上のわいせつ電磁的記録の頒布罪等の犯罪になることがあります。
その場合,警察に対して被害届・刑事告訴状を提出して,捜査をして犯人を逮捕・有罪にしてもらうよう求めることがあります。
刑事告訴とは,被害者その他法律上告訴権がある者が検察官または司法警察員に対し,犯罪事実について犯人の処罰を求める旨の意思表示をすること(最判昭和26.7.12)をいいます。
告訴は,犯人の処罰を求める意思表示であるという点で,被害届とは異なります。
告訴の効果として,告訴がなされたからといって検察官が起訴を強制されるものではないのですが,刑事告訴がなされると,捜査機関である警察官や検察官に様々な義務が生じるため,警察官が告訴状を受理したがらない傾向にあります。
そのため,刑事告訴の手続きについて,告訴状の作成や提出,警察との被害相談について,弁護士が入って対応するケースも多いです。
刑事告訴の具体的な法律については,以下のコラムをご覧ください。
リベンジポルノ対策まとめ
以上で説明をしてきたとおり,リベンジポルノは犯罪に該当する違法行為です。
そして,リベンジポルノが一度インターネット上に流出してしまうと,それをダウンロードした人が再度アップロードするなど,インターネット上から完全に消し去ることが難しくなってしまうことが多いです。
そのため,まずは,性的な動画を撮らせないよう最大限の注意をしていただきたいと思います。
また,動画や画像を撮られてしまったなどの場合には,一刻も早く削除等の対応を採ることが重要です。
個人で判断ができない場合には,専門家である弁護士等に相談をしてください。
関連動画として,以下の動画もご参照いただけたら幸いです。