他人を誹謗中傷する投稿をしてしまったときの対処法を弁護士が解説!

弁護士 若林翔
2020年02月04日更新

近年インターネットが発達し、ブログや掲示板・SNS等において誰もが容易に投稿できる時代になるにつれ、その利用者も増加の一途をたどっています。

しかし、それに伴い、投稿に対するトラブルも多くなっており、弊所でも投稿した側・投稿された側ともに相談件数が年々増加しております。

ただ、投稿された側がどうすべきかにおいては、弊所の当サイトに限らず多くのサイトにて解説がある一方、投稿した側がどうすべきかについては多くありません。

そこで、今回は投稿した側の視点で、他人の誹謗中傷やプライバシーなど権利を侵害する投稿してしまった場合にどうすべきかについて以下解説いたします。

どのような投稿が誹謗中傷として権利侵害になるか??

【投稿内容】

①名誉権侵害

SNSトラブルで多いのが名誉権の侵害を主張される場合です。

名誉権は、個人のみならず、企業などの法人にも当然に認められています。
名誉権の侵害とは、簡単に言えば、「人の社会的評価の低下をもたらすもの」ということになります。

判例によると、名誉権の侵害に当たるかどうかは、「一般読者の普通の注意と読み方」を基準に、投稿が人の社会的評価を低下させるかによって判断されます。

このときに、「一般読者」というのは、何の前提知識も持たない国民一般を指すのではなく、相応の前提知識を有し、投稿内容の趣旨を理解できる者を指すとされるため、注意が必要です。

②プライバシー権侵害

次に多いのが、プライバシー権侵害のケースです。
名誉権とは異なり、プライバシー権については個人にしか認められません。

プライバシー権は古い判例で「私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利」と定義されていますが、最近では氏名、住所、電話番号等も含まれると判断されることが多くなってきています。

プライバシーに当たる情報が他の投稿者によって既に掲示板やSNS上で公開されている場合、もはやプライバシー権として保護されないのではないかという問題がありますが、一旦公開されてしまえばあとはどれだけ拡散してもよいというのはプライバシー権の保護として十分ではないと考えられています。

したがって、既に公開されている情報であっても別途プライバシー権侵害となる可能性があり、注意が必要です。

③他の権利侵害(著作権・営業権など)

その他、他人の著作物を勝手に公開したというケースであれば、著作権のうち送信可能化権と公衆送信権が、営業の妨害につながるようなケースであれば、事業を継続的に行う上で認められる利益として営業権が問題となり、これらの権利侵害も損害賠償請求の対象となりえます。

【投稿手段】

現在日本で人気のSNSの多くは、匿名性を有しているとされます。
この匿名性によって、気軽に情報発信できる一方、一時的な感情から過度に攻撃的な内容を投稿してしまったり、他人の権利を侵害する投稿をリツイートやシェア、コピペするなどして結果的に間違った情報の拡散に協力してしまった方は少なからずいるかと思われます。

なお、リツイート等することが権利侵害となるのか疑問を感じられる方もいらっしゃるでしょう。

この点について、現在の裁判所の考え方では、「リツイートは,既存の文章を引用形式により発信する主体的な表現行為としての性質を有する」(東京地方裁判所平成27年11月25日判決)とされています。

つまり、リツイート等であっても、リツイートをした人自身の投稿、発言と考えられており、「自分は誰かの投稿をリツイートしたに過ぎない」という反論はできないということになります。

さらに、ある投稿やリツイート等が、他人の権利を侵害するかの判断に当たっては、投稿がなされた前後の投稿や文脈(特に投稿前のもの)も含めて判断されるため、思わぬところで権利侵害と判断される可能性があります。

また、被投稿者は発信者情報開示を請求する権利を持っています。
発信者情報開示請求がなされると,プロバイダ(なお,プロバイダについての詳細な説明は後述します)ないし裁判所の判断により投稿者やリツイート者の情報が被投稿者に対して開示されます。

発信者情報が開示された結果,投稿者(リツイート等も含む)の氏名住所メールアドレスが被投稿者に明らかになり、その情報をもとに損害賠償請求がなされることになりますが、この請求内容は数百万円の損害賠償請求となることもあります。

*刑事事件の被疑者にも?

さらに、名誉毀損罪(3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金)や業務妨害罪(3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)として刑事告訴されることも考えられます。

その場合、起訴されなかったとしても、捜査の過程で、パソコンやスマートフォンが押収されたり、警察に被疑者として任意同行を求められることは十分に考えられます。

関連記事:【名誉毀損判例】ネット上での誹謗中傷が名誉毀損にあたるとされた裁判例まとめ

 

誹謗中傷コメントを投稿した側はどうなる??

では、いつ、どのようにして加害者として見られているということがわかるのでしょうか。
これにはいくつかのパターンが考えられます。

①発信者情報開示請求をされて意見聴取される場合

被投稿者には発信者を特定できていないのが通常です。

そこで、被投稿者は、プロバイダ(SNSや掲示板等情報を公開しているサイトの管理者であるコンテンツプロバイダや、情報が保存されているホスティングプロバイダ、携帯会社やOCN・ソニー等のインターネットサービスプロバイダ)に対してプロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求を行うことになりますが、この請求があると、発信者に対して意見聴取を行うために通知がなされます。

②その他

その他にも、被投稿者が発信者を特定していれば、損害賠償請求の相手方として、内容証明郵便訴状が突然届くようなことも考えられます。

誹謗中傷した側の採るべき対応

被投稿者から自己の権利を侵害する投稿だと思われてしまった場合、発信者情報が開示されることや、損害賠償請求を避けるため、迅速かつ的確な対応を採る必要があります。

もっとも、本当に当該投稿が第三者の権利を侵害してしまっているのか、自分の個人情報が被投稿者に対して開示されても仕方ないものなのかを判断するのは容易ではありません。

この点、弁護士に依頼することによって、インターネット上の問題に精通したプロフェッショナルから、法的観点を踏まえたアドバイスを受けることができます。

上記①のように、発信者情報開示請求がなされ、意見聴取となった場合には、仮に権利侵害をしていないのであれば、回答期間が定められている中で、自らの投稿に問題がない(権利侵害をしていない)ことを法的観点を踏まえた上で具体的かつ適切に述べなければなりません。

権利侵害を行っていた場合には、この時点で投稿を(削除が可能なサイトであれば)削除してしまうのも一つの手段ではあります。被投稿者の目的が投稿の削除にあり、損害賠償請求まで求めていないのであれば、それ以降の対応は不要となります。

もっとも、権利侵害の有無だけではなく、権利侵害をしていたとしても違法性が阻却され、権利侵害とはならないケースもあります。
そのため、その判断は専門家である弁護士に相談したほうが良いと考えられます。
併せて、プロバイダに対する回答内容について具体的にアドバイスさせていただくことや、プロバイダに対して弁護士名で意見書を作成して提出することができます。

また、②のように相手方から内容証明郵便で請求があった場合や、民事訴訟に発展してしまった段階でも、弁護士であれば代理人となって被投稿者に対する請求額の減額交渉や、裁判所への対応が可能ですので、慌てずにご相談いただくことをお奨めします。

誹謗中傷した後に解約しても意味がない

これまで見てきたとおり、日本で人気の各SNSには匿名性があるとは言われるものの、この匿名性は、発信者情報開示請求や警察による捜査によって突破される可能性のある不完全なものです。

さらに、投稿者側には、投稿を削除してくれとプロバイダ等に請求する権利は法律上認められていません。
そのため、web上の問い合わせフォームなどから任意に削除してもらうように求めることができるにとどまります。

稀に、インターネット回線の契約や、スマホの契約を解約して安心されている方もいらっしゃいますが、投稿に関する情報や、契約者だった人の情報は、一定期間保存されているため、解約したからといって逃げ切れるものではありませんので注意が必要です。

他人の権利を侵害するような投稿やリツイート等をしないように注意することにこしたことはありませんが、万が一そのような投稿をしてしまった場合、これを放置しておくことには大きなリスクがあります。

弊所グラディアトル法律事務所でも、こうしたインターネット上でのトラブルの案件を数多く取り扱っており、そのノウハウも日々蓄積されているところです。

投稿内容が権利侵害となるのかの判断や、違法性阻却の有無、意見書の作成等、対処法を弁護士と直接相談できる無料相談を実施しています。

お困りのことがあれば、ぜひ一度お電話いただければと思います。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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